ありま座の恋

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繁華街として名高い駅を通り過ぎて、三駅ほど。明るいレンガ色の商店街を抜けたところにある、カフェ併設の大型書店『ありま座』の平日は、ほどよく賑わい、いい塩梅で落ち着いている。 以前は開閉式の重い扉だったが、最近自動ドアになった。入口をくぐる度に、「年寄りや子連れに配慮したんだ」と笑う有馬社長の顔が浮かぶ。 そのくらい、白髪を充分に蓄えた彼は、同じことを繰り返し話すのだ。 プライベートであれば苦痛に感じるであろうそのしつこさも、こと有馬社長になると何のその、そんなことは全く気にならない。 むしろこの書店内に長居することができて、好都合だったりする。
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