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「これ、どこに運ぶんですか?」
カウンターのすぐ脇に置かれている段ボールに手をかけようとすると、久坂さんは慌ててその箱に飛び付き、「いえそんな、大丈夫です」と大きく首を振った。
しゃがんだ姿勢で、彼女と視線が合う。
大きすぎない控えめな二重。長い睫毛が一度だけ上下したかと思うと、すぐに反らされてしまって無駄にがっかりする。
人見知りなんですと、いつか雑談をしたときにそろりと打ち明けてくれたことがある。
あのときは彼女に一歩近付けたような気がして浮き足立ったけど、その後距離は縮まらず、カウンター越しに言葉を交わすだけの日々が続いている。
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