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立ち上がって何気なくカウンターを見ると、レジ横に置かれた新刊の漫画本の隣に、長方形の栞が置いてあった。
紐解かれた黄色いリボン。星柄の箱からころころと転がり出ているのはチョコレートだ。
変わった絵柄だなと見つめていると、久坂さんが俺の視線に気付いて答えをくれる。
「もうすぐバレンタインなので、社長の有馬が遊び心で作ったんです」
「ああ、もうそんな時期なんですね」
三十過ぎた独り身の男からすれば、ありふれた一日と何ら変わることはないバレンタインデー。
一方、二十代の久坂さんにとっては特別な日で、本人に確認したことはないけどきっと相思相愛の彼氏がいて、手作りのチョコレートを渡したりするんだろう。
「ありま座さんのオリジナルってことですか?」
「はい、そうなんです」
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