第一章

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 悪神としてはるか昔に封印された神様がいた。  けどそれは悪意ある人間の策略だったと判明。現代になって解放された蛇神は、封印を解いたあたしを嫁にする宣言して押しかけてきた。感覚が大昔だ。  紆余曲折の末、条件付きでいわば契約結婚に同意した。  最近分かってきたのは、九郎はやたらと執着・独占欲が強く、しょっちゅう体の一部(蛇)出して巻きついてくること。蛇の習性だというが、ほんとかどうか疑わしい。  さらにゲーマーでユーチューバーで料理上手い主夫で色んな企業・店経営してるCEOで……どこへ行こうとしてるのか謎である。  しかも、ボケなのか素なのか、時々トチ狂ったこと言い出すことが……。 ☆ 「二月といえば、バレンタインだそうだな。なかなかうれしいイベントができたものだ。てわけで東子、チョコちょうだい。手作り」 「―――は?」  あたしは信じられないものを見る目を向けた。  ついに本格的に狂ったか。 「九郎、正気?」 「……失礼ですが、やめておいたほうがいいと思います、九郎様」  九郎の配下で鶴の妖、大和撫子美人の雪華さんもマジで言う。  ちなみに現在本殿に四天王集めて二月の神社の行事について打ち合わせ中だ。 「あたしがヤバいレベルで両リベタなの知ってるでしょ。食べ物が食べ物でなくなるのよ。自覚はある」 「ええ、本当に……特訓に付き合いましたけど、すごかったですわ……」  分かっててもそこで遠い目されると悲しい。  これまでは『邪神の監視人』と言われ、起きた不幸を全て八つ当たりされていたため友達もいなかったあたしだけど、『縁結びの神社の娘』に設定チェンジしてからはがらりと変わった。今年は友チョコ一緒に作ろうと言われて参加したものの……。  同じことしたのに、でいあがったのはデンジャラスなクリーチャー。  なぜだ。  見かねた雪華さんが特訓付き合ってくれたものの、一向に上達せず。キメラを量産しただけだった。……既製品にしようと決めた。  いいよもう。人には向き不向きがあるの。うちじゃ料理上手な神様がいるんだからいいのっ。 「知ってる。前に食べてマジで三途の川渡りかけたから。でもあれ癖になるんだよ。たまに食べたくなる」 「妙な中毒になるな。向こう岸に逝っちゃう快感は忘れろ。とにかくチョコ食べたいなら、ほら、市販品あげる」  おやつの皿からチョコ菓子とってあげる。
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