第二章

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第二章

 うちの神社の初・節分は年齢層ごとに三つに分けた。  13~15時は子供向けで二つのブースを同時展開。未就学児用は本物の鬼とのふれあいコーナー、鬼のお面工作コーナー。小学生用は鬼とドロケイ。冬でも元気に遊びましょう。  ―――はい、今のツッコミどころだからね。  企画したのは言うまでもなく九郎。 「配下に流紋さんとか本物の鬼がいるんだから普通に豆まきすれば。……みんな良い鬼さんだけど演技で」 「うーん、気の毒だろう? 人間が悪いものを勝手に鬼だと言ってるだけで、いいやつも大勢いる。それに『悪神の封印場所』時代で分かる通り、悪いもの・嫌な気持ちを受け入れる場所が必要なんだよ。人間は弱いからな」  それは分かる。 「人もストレス発散の場所が必要だということさ。大人用はきちんと用意しといてやるから、子供は楽しく遊んで発散してもらおう」  てわけ。 「おにさん、おっきー」 「肩車たかーい」  意外なことに子供たちは泣くどころか大喜びだった。どうやら特撮の怪獣扱いっぽい。確かにいかにも鬼すぎて作り物だと思うわ。  鬼たちもノリノリで特撮バトルの真似してくれるもんで、保護者も本物のスタントマンだと勘違いしてた。 「すごいわねー、今の着ぐるみって精巧。リアルだわ」 「ファスナーどこにあるんだろう?」 「中の人、動きキレッキレ」  中に人いません。アレ本物です。と心の中でつっこんでおく。  子供ウケのいい流紋さんは音頭を取ってドロケイやってる。普段はショタキャラに化けててお姉さま方のアイドル的存在だが、今は本来の姿だ。2m越えの鬼。でもあんまり恐くない。  九郎がスマホ見て言った。 「ふむ、やはり外に大人の部の順番待ちしようと人が結構来てるな」 「並ぶのも場所取りも禁止って事前告知したのに」  神社によっては何時間も前から並んでる人がいる。うちは全面禁止にした。場所取りできないよう、先に子供向けイベントを入れたくらいだ。  インフルや風邪の流行ってるこの時期、長時間外で待ってたせいでひいたとかクレームつけられると困るのよ。 「どういう豆まきやるかちゃんとHPに乗せたし、ポスターも貼ったじゃない」 「それでも並ぶ人間はいるだろう。見てないのだろうな。近くにプレハブでカフェ設置してある、剛力に誘導させてるとこだ。周辺で並んで待つのは禁止と随分前から張り紙もしてる。露駐してる車も移動させよう」
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