第二章

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 すぐ真面目な顔つきに戻って噛み始めた。 「おいし? よかったねー。いい子いい子。……って九郎、背後で殺気放たないでよ」  振り向けば祀り神様が不穏な空気はらんでた。瞳が蛇のになって、首も八つ全部出てる。  上弦さんが恐怖で骨ガムくわえたまま固まった。 「何なの?」 「東子に『あーん』してもらうとか……俺の特権なのに。せっかくその首輪、一度も絞めずに済ませてやろうと思ったが、使う時が来たか。消えろ」  うわ、マジだこいつ。ズゴゴゴゴって効果音が聞こえる。  あんたがトラブルおこすんじゃないわよ。  あたしはすばやくポケットに入ってたチョコ菓子を九郎本体に八つの首全部の口に突っ込んだ。  自衛のために代々習得してきた武術や技術の見せどころだ。 「小腹でも減ったの? お腹すくとイライラするのは分かるけど、八つ当たりしないの」 「……八つ当たりじゃないんだが。もぐもぐ」  見てた流紋さんがツッコミを入れた。 「違いますよ。鈍いですね東子様……。上弦、おーい、帰っておいでー」 「い、生きてる? それがし助かった?」 「気をつけな? 九郎様は東子様に対する独占欲すごいんだよ」 「蛇だからな。上弦、何のためにお前を狼の姿で配置したと思ってる。『お手柄ワンちゃん』として大勢から好意向けられれば、最初に優しくしてくれた東子に惚れることもなくなるだろうという意味だぞ。万一東子に惚れてみろ、即刻消す」  あたしは勘違いにあきれた。 「あんた何言ってんの。上弦さんはあたしが嫌いだって言ってるじゃない。ありえない妄想しないでよ。そもそもあたしは美人でもなんでもないし」 「その通りです」  きっぱり否定する上弦さんを九郎はなおもねめつけた。  ☆  午後三時、豆まき大人の部。  10分前には子供の部を終了し、入れ替えた。  普通の神社の豆まきなら本殿や櫓の上からまくが、うちは違うのにした。本殿前に大きなビニールシートを敷き、周りを円形にロープが張られている。参加者はロープ沿いに並んでぐるりと立つ。手には円になる時に配った豆を持っている。  そう、参加者自身がまくスタイルだ。  境内の端には鳥部隊がスタンバイしている。リーダーは雪華さんで、本来の鶴の姿に戻っていた。一匹だけレべチな美しさ。
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