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vi
最後に妹の息を止めた後、私は産まれてきて初めて涙を流しました。その涙は悲しみや優越感、虚しさ、確かな満足、浮遊感、罪悪感、絶対的な感動、あらゆる感情を含んでいました。残ったのは新しい日常を迎えられるという幸福でした。これで私の望み通りの日常を、柔らかく暖かい私だけの光を、この世に溢れた神の愛を、すべて飲み込むことができたと安心しました。
昔から愛すべき家族からの愛というものを得られなかった私は周囲の人間からもそう見えていたらしく、突然家族が居なくなったとしてそれほど気に留められることもなく、ただ家族に捨てられた可哀想な子供だと考えられていました。捨てたのは、私です。亡きものにしたのは、私の方です。しかしそう悟られてしまうと幸福な日常が壊れてしまうのでそれは黙っていることにして、大人しく可哀想な子供を演じました。それでも私ももう何も出来ないほど小さくもありませんでしたから、1人になりたいと言っても違和感を持たれることなく、こうして幸せな日々を過ごしています。
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