匂いの研究

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 目に見えないものという言葉が何故かひっかかる……  目に見えないものって色々あるけど……  そう、例えば“魂”とかも……  冬でもないのに、自宅のリビングの空気が何となくひんやりと感じられてくる。 「人は幸せになるの……病からも死からも解放されて、ずっと幸せに生きていけるようになったのよ……」  涼子の”研究”が、人間の生体から魂を分離させることに成功したとしたら……?  誰も来ない日曜日にわざわざ出社して、そのまま研究室で何かの作業をしたまま死亡しているのを発見された涼子……至福の表情でお棺の中に横たわっていた涼子……  私の腋の下を冷たい汗が流れ落ちる。   まさか……でも、そんなの駄目だよ……涼子、それ絶対間違ってるよ…… 「今度は、あたしが和美ん家に行くよ……ちゃんとしたお土産持ってくからね……」  ふと気が付くと、今まで嗅いだことがないような鮮烈な薔薇の香りが、私の周りに漂い始めていた……   
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