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異様な味が口の中に広がった。
苦いというより、妙にぴりぴりと辛い。甘味も全然なく、およそチョコレートの味とは程遠い。歯ざわりもおよそチョコレートのまろやかな物ではなく、妙に粘っこく、同時に何やらざらついた感じの粒子のような感触もある。思わず両手を口の前に持っていって、今口に入れた欠片を吐き出してしまった。
「きゃはははは、引っかかった!」
いかにも嬉しそうに笑いながら、涼子が手際よくティッシュを取り出して私の手から黒いかけらをふき取った。
「ちょっと!何食べさせたのよ!」
訳の分からないものを口に入れさせられて、本能的な怒りがこみあげてくる。涼子はと言えば、まだ涙を流して笑っている。
「ごめん、ごめん。リヒテンシュタインてのは嘘。これね、うちの会社が作った、ちょっとしたいたずらグッズなのよ。チョコのように見えて、チョコじゃない。さて、何でしょう。勿論人体に有害なものじゃないから、そこは安心して」
何か?と聞かれると、戸惑ってしまう。良く知っているもののような気がするが、何故かもやもやしてはっきりしないのだ。少し考えてみたら、やっとわかった。
「チョコに見えるけど、これってカレーじゃない?」
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