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「正解!そうです。これは板チョコに似せて作ったカレールーなんです」
口に入れた時の味を反芻してみれば、確かにこれはカレーの味だ。でも、何故すぐにカレーだと気付かなかったのだろう……しょっちゅう食べているのに。考えてみたら気が付いた。カレー特有のあの強い香りが、全然しない。だから、すぐにわからなかったのだ。
「でも、これってカレーの匂いが全然しない」
「そうなのよ。この“チョコカレー”は、カレーから匂いだけが完全に飛んでいるの」
「なんでそんなバカみたいなもの作ったの?カレーの楽しみの半分は、あのスパイスの香りじゃない。匂いの無いカレーなんて、本当に不味いだけだよ」
「まあ、そこは騙して人に齧らせるための、いたずらグッズだからね。口に入れるまでわからないように、完全に匂いが飛んでる方がいいのよ」
「なによそれ。今時そんなの全然面白くもないし、大体食べ物で遊ぶなんて、程度低すぎるよ。ましてや食品会社のくせに」
はめられたことに腹が立ったので、徹底的にディスってやる。
「本当にごめんね。でも遊んでいるわけじゃないのよ。これは真面目な社内プロジェクトなの」
涼子は真剣な顔で説明を始めた。
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