匂いの研究

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「ニュース見たよ。再利用って、ああいうものを作ってたわけね」 「そういうことだったのよ。例えばお腹のすいてる時に、ご飯だけ炊いてこの匂いを嗅げば、それだけで何杯も行けちゃうでしょ。価格も一回あたり10円に満たないくらいだから、どうしてもおかずが無い時に、食前にこの匂いを嗅いでおかず替わりにする、そういう使い方が出来るというわけよ」  確かに我々日本人にとって、カレーの匂いは何故か強烈に食欲を刺激する。特に空腹時においては、殆ど支配的とも言えるパワーを発揮し、帰宅する人の足を急がせ、全てを放り出してキッチンへと人を向かわせる。 「……うーん、まあ、分からないでもないけどねえ……でも何だか、落語みたい。ほら、すっごいケチなおじさんがいて、毎回梅干一個だけでご飯食べてるって言ったら、もっとケチな人から『なんて贅沢なことを』って叱られちゃうの。『わしなんか梅干の絵だけ眺めて、つばが湧いてきたところでご飯を掻っ込むんだ』ってやつ」     
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