匂いの研究

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「うーん、なんか和美の声が聞きたくなっちゃって電話しちゃったぁ、あはは」 「あんた、酔っぱらってんでしょ。なによ、もう」 「うん、ちょっと飲んじゃったの。だって嬉しいんだもん」 「何がよ?」 「あたしの研究がねえ、とうとう完成したの!」 「ああ、例の匂いの研究のことね。第二弾も発売されて順調みたいじゃない」 「ああ、あれね……あんなのは、まあ……そうじゃなくてね」 「何よ、要領得ないわね」 「あのね……匂いの研究をもっともっと幅広く応用する技術が完成したの……これはね、人類にとっての福音なのよ!」 「大げさねえ」 「本当にそうなんだからぁ……人は幸せになるの……病からも死からも解放されて、ず―――っと幸せに生きていけるようになったのよ!だからもう嬉しくて嬉しくて、つい飲んじゃったのよぉ……」 「はいはい、良かったね。今度素面の時に、ゆっくり聞かせてね」 「うん、また沢山お喋りしようね!今度は、あたしが和美ん家に行くよ……ちゃんとしたお土産持ってくからね。あ、勿論チョコカレーじゃないよ、あはははははは……」 「もう寝るよ、おやすみ」  まったく、好い気なもんだ。ムカつきながら電話を切った。  それから一週間程経った今日。  たった今、私は涼子のお葬式から帰って来た。     
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