季節への思い

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廊下を歩いていると、障子戸越しから声が聞こえます。 お婆さんと叔母さんの声です。何やら楽しげに話していますね。 でも私は、まだ戸を開けて挨拶はしないんです。 だって恥ずかしいじゃないですか……。 寝起きの醜顔を晒すなんて……。せめて顔くらいは洗います。 洗面所に行くと、真っ正面にある鏡に、自身が映っています。 唇が乾燥していて、今すぐにでも潤いが欲しい、そう言っているように見えます。 ああ、冬が嫌いになりそうです。 なぜ、こうも私を困らせるのでしょうか……。 いくら寒くても、心の内くらい温かいままでいたいのです。 これも感覚の問題ですか? そうなのかもしれませんが、それでも私は気落ちしてしまいます。 いつだって私は、私の中で最上の綺麗でいたいのですから。 綺麗にも醜いにも強く反応してしまいます。私って面倒臭い人間なのでしょうか……。 顔を洗ってタオルで拭いてから再び鏡を見ます。 私は微笑を浮かべたんです。 昨日、読んだ本に、こんなことが書いてありました。 女は、自分の運命を決するのに、微笑一つで沢山なのだ。 清々しいほど自信に溢れていますよね。 私の微笑にも、それほどの力があるでしょうか……。 とてもじゃないけど、堂々とそのような事は思えそうもありません。
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