稲川真由

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私の友人である稲川真由は可愛い子だ。 丸い小さな顔に大きな瞳、口角の上がったぷるんとした唇、小さな鼻、さらさらの髪。 誰がどう見ても大学生には見えない容姿だ。とどのつまり、すごくすごく童顔なのだ。 低い背丈も相まって中学生だと言われても納得がいく。 「それでね、それでね、すっごく可愛かったの!猫ちゃん、よちよーちって撫でさせてもらってね」 さらにこの喋り方。 大学生だ、成人済みだ、といってもなかなか信じられない。 「動物、大好きだちね」 真由がそう言って笑う。 彼女は『し』が言えない。どうしても発音できないらしい。 いわゆる、舌ったらずというやつだ。 それでも真由は可愛い子だ。私の友人だ。 でも一部の女子からは嫌われてる。可愛子ぶってる、色目を使ってる、気持ち悪いって。 確かにそんな風に見えてしまうのかもしれない。 だけど、彼女は彼女自身で悩んでいる。 なるべく『し』を使わないように言葉を選んだら姿は息苦しそうでもある。 大人っぽく見える服装や髪型や化粧に気を使ったり、振る舞い方は話題にも気をつけている。 私の前では気にしなくていいんだよ、と言った時の彼女のことは忘れられない。 ぼろぼろと泣き出して私の手を握っていた。 「本当に?いいの?お友達でいてくれる?気持ち悪いって言ったりちない?」 それから稲川真由は私の親友になった。
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