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近頃、妻と上手く行っていない。いや、正確にはもっと前から溝は出来ていた。この頃はそれが一段と深く、濃くなってきている。
平城山達也は車内で短く溜め息をついた。
設置型の浄水器を取り扱っている会社で営業職として就職し、毎日夜遅くまで営業に回っている。今日は新規の取引先へ訪問する予定になっている。
妻であるエリと達也が初めて出会ったのは、大学4年生のゼミだった。
小柄で小動物のような顔をしている彼女は、達也のドストライクだった。
品が良くシンプルな色でまとめたファッション、丁寧な話し方、適度に良いノリ、全てがバランス良く、実際に周囲の男はエリを口説こうと必死だった。
達也はその中で一番になりたいと強く願い、誰のモノにもしたくないと思った。
そして、猛アプローチの末、交際に至った時は、天にも昇る気持ちだった。
エリを初めて抱いたのは、交際して2回目のデートだった。
最初のデートで抱かなかったのは、軽い男だと思われないためだ。
大抵の男はせり上がる下半身の隆起を抑えきれず、欲望のまま女を抱く。
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