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そして、ご丁寧に後ろの鳥居には、彼女を縛り付けている糸と同じような素材でできた、糸が出入口を塞いでいる。
俺は恐怖に慄き、腰を抜かすと、その場に座り込んでしまった。
後世のためにも言っておくが、お漏らしはしていない、断じてしていない。
二頭の狛犬は、こちらを睨み獰猛な声で威嚇してくるが、襲いそうな気配はなかった。
更に驚くべきことに、拝殿に設置されている神鏡が光だし、そのまばゆい光に目を細めながら見つめていると、そこに一人の人物が浮かび上がってきた。
「ほう、そなたはコレが見えるか?」
「…。」
「口もきけぬのか? されど先ほどはたいそうな煩悩の願いを我にしたではないか。」
「…。」
「ほう、面白い、まだ口を閉ざすか。」
光から出てきた人物は、阿吽の吽に顔で合図を送ると、吽はしりもちをついている男に近づき、鼻でクンクンとした後に、ペロリと大きな舌で顔を舐めた。
「神よ、こやつ気絶しております。」
「なんと、手水舎より水をもて、そしてこやつを清めてやるのだ。」
「かしこまりました。」
今度は、阿が答えると手水舎に赴き、口いっぱいに水を含むと、それを気絶している人間に施した。
「うふぇい」
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