ウバメドリと神様

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ウバメドリと神様

 「どうか、今年こそとびきり美人でスタイル抜群なナイス彼女ができますように。」  一円玉を、近所の神社の賽銭箱に投げ入れる。  俺の名前は小田(おだ) 氏春(うじはる)正月の初詣でこのお願いを毎年かかさずしている。  ちなみに、今年で二十歳を迎えるが、この切なる願いは五年の月日を費やし、更に毎年一円 を投資しているので、累計で五円にもなった。  そろそろ、この願いを聞き届けてくれてもよいのでは? と神様に問い合わせてみるが、まったく無反応である。    重いため息をつくと、踵を返し大学の講義に行こうとしたが、そのとき背後で何かが動く気配がした。  不審に思い振り返ると、拝殿の奥に紅く蠢く存在を確認できた。  俺は、興味半分で恐る恐る覗き込むと、そこには無数の紅い糸で縛り付けられている、とびきりの美人がいた。  「ちょっと、これって誘拐かなにか?」    現状を理解できないでいるが、これは何か大変なことが起こっていると思い、ポケットに入れてある携帯端末で警察へ連絡をとろうとしたとき、その電波は途切れ、真横に鎮座していた狛犬が生きた動物のように動き出すと、いきなり俺の左右を逃げれないように囲んだ。     
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