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第4章 君と笑顔の花を咲かせたくて
大きな木の下で、その逞しい幹に凭れかかって寝入っていた時に見た夢の中で俺は恵鈴に叱られていた。
道に迷ったあげく怪我までして、なにやってるの?
そういうところだよ!
もう! 私がいないと、ダメなんだから!
真剣に、すごい剣幕でそう言うと、今度は泣きそうな顔をして俺を抱きしめてくれる。
孤独を愛していた俺が、安心して孤独の世界に閉じ籠れるのは、恵鈴がいてくれたおかげだった。あの頃の安らぎを思い出す夢だった。
目を開けると、朝日が昇って周囲はすっかり明るくなっている。
空腹と喉が渇いているのもあって、俺は固まった身体を奮い立たせながら、なんとか立ち上がった。身体のあちこちが痛い。
湿ったズボンが気持ち悪い。それに、濡れた靴の中の素足がとてつもなく不快に思い、俺は日の当たる岩場に腰掛けると素足になった。
風は寒すぎず程よい強さで吹いている。
なんて清々しい朝だろう。
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