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重たい瞼を持ち上げようとしても、すぐに閉じてしまう。でも、その時。
ポタポタポタ……。
生温かい雫が、俺の頬に落ちてきた。
思い出したのは、手を切った傷から朱色の血がポタポタと足下の乾いた石の上に落ちたときの光景。
血は止まっていない―――。
そう思ったら、急に怖くなった。
全身に力が入って、震えと共にベッドがガタガタガタガタと激しく振動する。その音で、その確かな現実で、意識が引っ張られた。
ふわり。
温かい手が俺の顔を覆う。
懐かしくて甘い香り。
「燿馬!!」
真っ黒い空が、急速に夜明けの色に変化する。
流れる雲。
交じり合う光の乱反射。
眩しくて、目を細めながらも、ぎゅっと力いっぱい目を閉じていたところから結んでいた紐を解いたときのような、一瞬の自由を味わうように目を開けた。
柔らかな肉が唇に触れている。
俺は、物凄い至近距離から彼女を見上げていた。
閉じた瞼には薄いオレンジ色が施され、睫毛は細く長い。
右目のすぐ下に小さなほくろ。
涙ほくろがある。
ドキンと、心臓が激しく鼓動した。
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