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そこに、ドアがスゥっと開いて真央さんと尊美さんが入ってきた。この時やっと、俺は個室にいることに気付いた。
「気分はどお?」
真央さんは年齢の割に澄んだ声で、俺に聞いた。
「ちょっと辛そうなので、もう少し寝かせてあげた方が良いかもしれない」
俺の代わりに、恵鈴が的確な説明をする。朦朧としつつも、いつもの俺達に戻れたような嬉しさを感じていると。
また病室のドアが開いて、今度は両親が部屋に入ってきたのを見たら、俺はつい起き上がってしまった。
「ようちゃん?!」
「燿馬!」
血相変えて駆けつけるとはまさにこれだ。二人とも、笑顔で挨拶をする余裕もなさそうにベッド脇まで駆けこんできて、俺を覗き込んでいる。
「……パパ、ママ。ごめんなさい!」
「恵鈴……」
おふくろは、恵鈴の顔をじっと見てからすぐに俺に顔を向けた。
「ようちゃん。恵鈴が飛んできてくれたわね。良かったじゃないの」
そう言って、急に嬉しそうに微笑んだ。その顔を見たら、俺の胸に津波みたいな温かい気持ちが押し寄せてきて、急に泣きたい気持ちになった。
「よく頑張ったわね。ふたりとも」
おふくろが俺と恵鈴の手を掴んで、結びつけてくれる。
「……離れてみて初めて気付いたこと、沢山あったでしょ?」
涙声でそんな風に言われたら、簡単に決壊しちまう。皆が見ているのに、俺はガラにもなく嗚咽を上げて泣きたくなった。恵鈴も同じ気持ちなのか、小さな頃に還ったように「ママ」と言って、すがりつくように泣き出した。
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