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違う。こんな風に泣かせたいんじゃないんだ。違うんだ。俺は、俺は今もしかして冷たい言い方しちまったんじゃないだろうなバカヤロウ。
「あ、あ……な、なんて言うか……」
わーわー泣いている恵鈴の頭に手を乗せると、たちまち手首を掴まれた俺は、かなりヤバい予感に襲われた。が、時既に遅し。
ブォリ、ゴキュ
「……!」
腕が! 肩が!?
外れたーーー!?
「ギャっ!」
あまりのことに俺は、気絶した……。
♢
「えりん、手加減してやれとあれほど忠告したのに……」
パパに叱られながら、お医者さんが脱臼を治すところを遠巻きに眺めていた。
燿馬は白眼を向いて気絶してしまい、私はパニックに陥ってママに両頬を叩かれて、気を取り直すことが出来たばかり。
油断すると怪力が顔を出す。なぜかわからないけど、燿馬に対してだけストッパーが効かなくなってしまう。特に、気が昂ったりなんかする場合は、毎度のこと……。
「脱臼は癖になっちゃったのね……。ようちゃん、しっかり!」
ママと真央さんが燿馬を揺り起こす。肩を固める特殊バンドを装着させて、お医者さんと看護師さんが部屋を出て行ってもまだ燿馬は死んだように眠っている。
「仕事休ませるしかないわね。私から明日の朝、会社に連絡するわ」
ママが燿馬の髪を指で梳きながら言った。
「ごめんなさい」
皆が私に注目した。
「私ってばいつもトラブルメーカーで、迷惑ばかりかけちゃう……」
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