第4章 君と笑顔の花を咲かせたくて

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 今は、お互いに自分がひとりの人として生きていけるかを手探りしている。この道で確立するまでは、そばにいないほうが多分良いのだと思っているけど、それについてちゃんと話し合ったことがまだない。  私は、話し合う前に逃げ出してしまった。勝手な期待に圧し潰され、絵筆を折って、絵に対する罪の意識に耐え兼ねて耀馬に全力で甘えようとして……。  邪魔しちゃいけない。  せっかく見つけたあなたの道を塞ぐ障害物になどなれない。  そう思って、身を引いたつもりでいた。  でも、それが大きな過ちだったのだと今の私はちゃんとわかる。  もっとあなたを信頼して話し合えば良かった。  その勇気が、あの頃の私にはなかった。  目を閉じた。  絶望していたの。  私から光を奪ったのは自分だったのだと気付いた。  私にとってかけがえのないあなたを取り上げることで、暗闇から目を覚ましたかった。 「私、なにをどうしたって耀馬を私のわがままに付き合わせてしまうんだね。迂闊だったよ……。ね、もう起きてるんでしょ?」  耀馬は首を少しだけずらして、片目だけ開けて私を見上げた。 「……キスしてよ。話はそれからだ」  甘い。そして酸っぱい。  私は半べそをかきながら、耀馬に顔を寄せていく。彼の包帯によって丸くなった左手が、私の頭を後ろをがしっと掴んだ。  お互いに心のこもったキスは半年ぶりかそれ以上前の最高のキスよりもずっと熱くて、久しぶりに全身全霊でときめいた。  どこまでが私で、どこからがあなたなのか、境界線が曖昧になり溶けて交じり合い、ひとつの生き物になってしまったぐらいに強く深く繋がる、キス。  息継ぎしないと死んでしまいそうなキスに溺れ、この瞬間のために長く長い旅をしたのだと思い至る。隔てるものがなにもなくなる頃には、意識も魂も溶け合い、夜を漂う。押し寄せる波に身を任せ、冷めることのない熱情を貪っては明け渡して、命がふたつの体を交互に行き来する。
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