第4章 君と笑顔の花を咲かせたくて

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   ◇  人間には適材適所がある。そう教えてくれたのは、曽祖父だったり、親父だったり、おふくろや箱根の義両親だったりする。  恵鈴の開拓者魂によって、俺は今のライフスタイルに落ち着いた。設計士という仕事は大抵ネットが繋がっていればどこにいても出来る。たまには現場に足を運んで、計算通りに行けるかどうか見極めなくちゃなんないけど、こっちから行くぶんには不自由はない。  北海道のド田舎じゃ叶えられなかった自由を手に入れられたのは、殆ど恵鈴と真央さんとおふくろのおかげ。  俺は何もしていない。この中古の家に似合う家具を探したぐらいなもんで、気楽なものだ。  一番肝心なことさえきちんと押さえていればどんなこともオールオッケーで、それはかなりハードルが高いけど案外シンプルな法則だったりする。  尊美さん、それにおふくろの秘伝の法則。  『愛する人を変えようとしてはいけない』  細かいことは二の次だ。とにかく、恵鈴がご機嫌であればそれでいい。  だって俺は、君と笑顔の花を咲かせたくて頑張ってきた。今までも、これからだって大事なことは変わらない。普遍の真実。  恵鈴の瞳がほほえみながら取り込んだ世界が絵になって現れたとき、一枚の絵が俺の稼ぎを軽く超えても、気にしない。絵を描くために生まれた魂の輝きを、特等席で見ていられるこの幸運を神様に感謝して。 「あ、いまおならした」 「俺じゃねぇし! 桜亮だろ」 「おうちゃんのならしょうがないか」 「屁ぐらい別に良いだろ」 「やだ。なんかやだ。ちゃんとカッコつけてくれなくちゃ、嫌いになるかもよ」  『愛する人を変えようとしないで』、は俺の教訓で、どうやら彼女には関係ないようです。    [完]
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