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栗栖湖。
それは森林に囲まれた自然豊かな湖だ。
一番近い民家でも数十キロは離れており、ネットも電話もつながらない陸の孤島である。
満月が明るく地面を照らす13日の金曜日。
栗栖湖の側にあるキャンプ場で、3人の男女がたき火を囲んで談笑していた。
「この前さ。彼女と同棲することになって、それを機に引っ越したんだよ」
「知ってるよ。誰が手伝ったと思ってるんだ」
話し手の男は茶化されて苦笑する。
そんな彼氏の腕に、隣に座る彼女が笑いながら抱きついた。
「でね。どうせなら電子レンジも買い替えようってなって、少し高いやつを買ったんだ。これがすごいやつでさ。色々な機能があるんだけど、ボタンを押すと、それがどういう機能なのかを喋ってくれるんだ。電子レンジがだぞ?」
「まあ、最近はスマホも喋る時代だからな」
「電子レンジの下の部分に液晶画面があって、そこに人の横顔のマークがあってさ。口が開いた部分に声の大きさを表す棒線があって、そこで音量を調節するんだ。んでな? ある日、大学から帰って来た時に、なーんか台所の方が騒がしくてさ。彼女が帰ってるのかな? と思って台所に行ったんだよ。そしたら彼女が電子レンジに向かって、『600ワット3分ー?』って言ってて。顔のマークを音声認識マークと勘違いしたんだって」
それを聞いて、彼らは爆笑した。
隣にいた彼女が、顔を真っ赤にして彼氏の肩を叩いている。
「んじゃ、次はオレか」
キャップを被った男が、ごほんと咳払いし、真剣な表情になった。
先程までのへらへらした態度とまるで違うので、思わず全員が黙り込む。
「実はな。このキャンプ場って、呪われてるんだよ」
突然、キャップの男はそんなことを言った。
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