第1章

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「このキャンプ場って、栗栖湖っていう湖を囲んでるだろ? この栗栖湖って、実は昔は集落だったらしくてな。色んな村の厄介者達が追い払われて、自然とここに住み着いていたらしいんだ。けど、村の奴らはそいつらが生きていること自体が許せなかった。だからある日、細々と暮らしていた彼らに奇襲して、滅多打ちの皆殺しさ。んで、家を全て焼き払って埋めちまったんだと。そしたらその翌日、ものすごい嵐に見舞われた。焼き討ちに参加した村は残らず滅茶苦茶になって、焼き討ちしたこの場所に、いつの間にやら湖ができあがっていた。それがこの栗栖湖なんだ。それ以来、ここは呪われた地として知られ、この場所に足を踏み入れた人間は呪われるっていう伝説が、まことしやかにささやかれてるんだよ」 しんと、辺りが静まり返る。 その時突然、森の方から鳥が羽ばたく音が聞こえ、全員が肩を震わせた。 「あ、あはは! ちょっと、も~。作り話に本気出し過ぎ!」 「え? いや、作り話じゃ──」 「はい! おしゃべりタイムはおしまい! 明日も早いんだからさっさと寝よ」 彼女の一言で、みんな渋々と片づけを始めた。 就寝の準備を終えた者からテントに入っていき、一人また一人と眠っていく。 そんな中、こっそりとテントから抜け出したのは、恋人の二人だった。 二人は近くにある野原へ向かうと、笑いながら地面に転がった。 彼女に覆いかぶさるように、彼氏が倒れ込む。 「早く寝ようって言い出したのは、オレと一緒になりたいからだろ?」 「分かってるなら早く」 二人はそのままキスをした。 普段とは違うシチュエーションに、自然とボルテージが上がっていき、すぐさま二人は服を脱ぎ出す。 上半身裸になった男が、再び彼女と交わろうとした時だった。 「しっ」 突然、彼氏が辺りを警戒するように首を動かし始めた。 「なんか聞こえないか?」 彼女は何も言わない。 しかし彼氏の耳には確かに聞こえた。 グチュグチュと、水気のある何かをほじくるような、生理的嫌悪を覚える音が。 「もしかしたら、あいつにばれたかも。……まあいいか。見られて減るものでもないしな」 彼女は何も言わない。 そこで初めて、彼女の様子がおかしいことに気付いた。 「どうしたんだよ」 彼女は何も言わない。 ただ、口をあんぐりと開けているだけだ。 彼氏が首を傾げていると、彼女の口の端から、一筋の血が垂れた。 「え?」
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