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「…おじちゃんって」
「?」
「わたしのいのちのおんじん?」
「えっ?」
女の子は目を見開いて、頭上に立つ顔色の悪く、しかし優しく笑っている男を見上げた。男は首を傾げて、頭をかいてとぼけてみせた。
「どういうこと?」
「だってっ、おじちゃん、前、わたしの事助けてくれたでしょっ?」
女の子はぴょんぴょんとスキップする。男が慌てて追いかけようとすると、女の子はあははっと笑って立ち止まり、くるりと振り返った。白い雪が月光を浴びて光を放つこの空間に、女の子の白い肌が良く映えた。
「この森のの深くに、おっきいくまがいたの」
それでね、と、歯を見せる。
「昔、おかあさんとはぐれちゃって、ひとりでいたらね、そのくまがわたしのことを食べようとしたんだって!」
後でおかあさんから聞いたんだよ、と、何故か誇らしげに、武勇伝らしきものを語る女の子。男は醒めた目で空を見た。
「でもね、わたしは食べられなかった。
だって、おじちゃんが助けてくれたから!」
「…」
男は、女の子の瞳を再度見て、それから微笑んだ。
「…そうだったね」
男の瞳は茶色く、光があまり差し込んでいなくてもきらきら輝いていた。光が差していた。
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