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女の子は、それでも男の姿を見ていた。
「バイバイ」
男は毛皮のジャケットの袖を振った。
??
女の子が玄関に入ると、びっくりした様子で飛び込んできたおかあさんが、ぎゅっと女の子の小さな体を抱きしめた。
「遅かったじゃない!」
「……」
「どうしたの? ほら、お風呂はいろ…ーあら? 頭に何か…」
女の子の白いもこもこなニット帽の上に、茶色い毛皮が付いている。おかあさんはそれをつまんでとって、それから飛び上がった。
「熊?! あなた、熊に出会ったの?!?」
「…え?」
俯いて黙っていた女の子は、顔を上げて、その毛皮をまじまじと見つめた。その瞳が、だんだんと光を帯びていく。おかあさんは不思議そうに、女の子の顔を覗き込むと、女の子はきゃっきゃはしゃいで自分の体を抱きしめた。
「…くまのおじちゃん、ありがとっ」
***
熊はいつも、ひとりでした。
ひとりで森にいました。
ときたま、元気でかわいい女の子にであいます。
その女の子は、いつでもいちばんのりに、雪を踏んでいました。
でも、ふたりはいつも会うと、いっしょにいちばんのりになっていました。
女の子は、雪をいっしょにふむたび、
「ありがとっ!」って、言いました。
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