第六話 修羅場

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 自殺という選択肢を選ばなくても、朝出勤してこなかったり、仕事中に突然居なくなってしまったり、狂いだして壁に頭を打ち付けたり、見えない物が見え始めたり、様々な事象を見てきた。後になると笑い話しになる事もある。  しかし、そうならないためにも、どんなに忙しくても、どんなに追い詰められても、どんなに身体が辛いときでも、笑う事を義務付けている。心からの笑いじゃなくてもいい。作り笑いでもいい。  作り笑いもできなくなったら、心が摩耗しつくしている時だと考えている。できれば、作り笑いになる前に、強制的に休みを作る事にしている。  笑えなくなった部下を一人だけで休ませると、最悪な選択肢を選ぶ可能性もある。だから、真辺はどんな修羅場でも、部下が作り笑いになってきたら、全員で休む事にしている。  笑って、周りを見て、自分を確認しろ。  真辺たちは、今のチームになってから、一人の脱落者もないまま業界で過ごしている。  そんな部下たちを真辺は心の底から頼もしく思っている。信頼できる仲間だ。戦友と言葉を使っても違和感は無いと思っている。 「山本。それじゃ、ちゃっちゃと、始めるか?」 「いえ、もう殆ど終わりました。後は、火入れと確認です」 「あっそうか、すまんな。起こせばよかったのに・・・」 「何、言っているのですか?横でサーバラックの解体や移動のすごい音の中でも平気で寝ていた人が・・・」     
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