序章 昔話を読んだ日

2/7
63人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
 これは、昔々のお話です。  二千年以上も昔、世界ではたくさんの国が争っている時代でした。  何処の国も、自分のところが勝つために色々なものを作っていった時代でした。  自分が知らない国を倒すため、自分のところと違う国を倒すため、世界ではたくさんの武器が作られていきました。  武器だけではなく、たくさんの魔法も作られました。  痛いという感覚や怖いと言う感情を消してしまう魔法も作られました。  死んだ人間を動かすことができる魔法も作られました。  たくさんの兵器やたくさんの魔法がある中でも、強いと言われたのが優れた魔法を使う魔道兵でした。  百を超える戦車も、あっという間に壊してしまうほどの強さがあると言われるくらい強い魔道兵もいるくらいでした。  そんな中、とある国のとある王様が思いつきました。  どれだけ強い魔道兵も、死んだり老いてしまったらその強さが使えなくなると。  死んだ人間を動かす魔法はあっても、死んだ人間が使える魔法を使う魔法がなかったからです。  年を取ってしまったら目や耳が悪くなってしまうため、戦地へと行かせることができなかったからです。  それを、もったいないと考えた王様は、あることを思いつきました。  自分の国で死ぬことも、年を取ることもない、強い魔道兵を作れば、自分の国が世界で一番の国になると。  王様は、国にいるたくさんの魔道士や研究者を使って死なない魔道兵を作るため頑張りました  たくさんの時間がかかりました。たくさんの命が失われました。  そうして、死なない魔道兵が出来上がりました。  剣で斬られても死にません。  銃で撃たれても死にません。  爆発しても死にません。  戦車でひかれても死にません。  食事を与えなくても死にません。  水を与えなくても死にません。  年を取って戦えなくなることもありません。  戦争に勝とうとした王様の願った通りの死なない魔道兵ができあがりました。  ですが、死なない魔道兵は戦争に使われることはありませんでした。  死なない魔道兵ができたときに、戦争が終わりました。  戦争に勝とうとした王様は、戦争に勝とうという願いが叶うことなく負けました。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!