序章 昔話を読んだ日

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 戦争が終われば、戦争のためにと作られた道具はいらないものとなります。  銃や剣は、害獣を倒すためや必要最低限の自衛として残され、余ったぶんは溶かして別のものにしました。  爆弾は国と国を隔てる山にトンネルを通すための道具となりました。  戦車はその鉄を溶かして、新しく平和な世界を作るための物として使われることになりました。  道具だけではなく、魔法も変わっていきました。  よくない魔法として、使ってはいけない魔法となったものもあります。  魔道兵たちは、兵としてではなく人のために生きるようになりました。  だけど、死なない魔道兵だけは違いました。  普通の人と一緒に過ごすには、死ぬことが無い彼は恐ろしい存在だったのです。  みんな、死ぬことが無い『死なない魔道兵』を傍に置きたくなくって、どうするべきか頭を抱えました。  そんな人たちの前に、墓守一族と呼ばれる人たちが現れました。  死んだ人の魂が安寧の国へと旅立ち、魂の眠りが安らかに穏やかであれるよう守るのが墓守一族の役目です。  そんな彼らは、死ぬことができず安寧の国へと向かうことができない『死なない魔道兵』が二度と戦争に使われないよう、普通の人たちから遠く離れた、自分たちが守る土地に家を用意しました。  その家に、死なない魔道兵が朽ち果てることができる日まで守る『守り人』を用意しました。  死なない魔道兵の魂が安寧の国へと旅立てるようになるまでの憩いの場であり、人々の身勝手な欲望に利用されることが無いように。  ですので、世界の色々な場所にある墓守一族が守る土地のどこかに、小さな家があることでしょう。  死なない魔道兵を守り、いずれその魂が安寧の国へと向かう日を願って寄り添う『守り人』が過ごす家が
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