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「!」
それは、いくつものスポットライトの光だった。目の前のステージの上に設置されたいくつものスポットライトが、昼の青空の下だというのに、かまわんばかりの光を放って、そのステージ上を照らしていた。
けれど、本当にまぶしかったのは、それじゃあなかった。
ライトの中、『それ』はあらわれた。まぶしいいくつもの光が、照らし出す、長い道のようなステージの上を、カラフルな影が堂々と姿を現したのだ。
それは、『服』を着た人々だった。――いな、正確には、『服』と思われるもの、を着た人々だった。
まるで青空をそのまま縫い付けたかのようなデザインのドレス、丸い傘を足元に指しているかのような裾の短いドレス、まだらで、絵の具をまぜこぜにした筆入れのバケツのような色合いをしたワンピース、風船のようなものをはりつけだけのようなやけに丈の短い服装に、バルーンでできた花飾り――。
とにかく、『服』というには、あまりにも奇抜すぎるデザインだった。しかし、それでも、それが『服』である事はわかる。だって皆、それを着ているのだ。
俺の知っている『服』とは全然違う。
だけど、確かにそれは『服』だった。『服』が、人に着られてステージの上を歩いている。
会場内が先刻よりもにぎやかになる。観客達の歓声。それよりも大声で、まるで一種のライブ会場であるかのような轟音の音楽が、場を支配し始める。観客達の盛りあがりをさらにあげるように、容赦のない音量を周囲の校舎にぶつけては跳ね返しながら、何重ものエコーを響かせ、会場を飲み込む。
けど、そんな音楽にも観客の歓声にも、そのカラフルな影たちは歩いていく。
音楽のリズムにあわせるでもなく、かといって歓声に反応を返すでもなく、たんたんと歩いていく。
まるで、『服』そのものだけを、見せつけていくかのように――。
と、突然会場内が大きくわきだった。びっくりすると、兄が、お、と声をあげた。
「見ろ。我らが表参道総合の大目玉が出てくるぞ」
(――大目玉……?)
会場内を、その『服』が歩いてきた。
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