壱章 結守の社へ

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 一定のリズムで揺れる車内で、ぼんやりとその手紙を見つめていた。  ふう、と小さく息を吐き、車窓の外へと視線をむける。  競うようにビルが建っていた三時間前の景色とは打って変わって、どこまでも田園が続くのどかな風景が広がっていた。  『松野(まつの)三門(みかど)』  この手紙を送ってきた人物の名前だ。  最後に三門さんと会ったのは私が五歳の時らしく、正月に一族が集まった新年会の写真に、まだ少年だった頃の姿が写っていた。  去年大学を卒業したばかりの彼は、私の父方の祖父の兄の息子といった具合にとても縁の遠い人で、普段から手紙のやり取りをするような仲ではない。  けれどこうして私は届いた手紙を握り締め、おくってもらったチケットを使って列車に揺られているのには、少し訳があるのだ。
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