肆章 木霊の探し物

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 でも、もう限界だった。  芲埜祈の思い出を見てしまって、その心の中が私へ流れこんできて、芲埜祈のつらそうな顔を見ることが耐えられなかった。  「────どうして、」  三門さんが不思議そうに私の名前を呼ぶ。  「どうして魑魅の正体は兄弟なんだって、教えてくれなかったんですか」  ことん、と芲埜祈の手から箸が滑り落ちた。それは畳の上をころがり、自然と止まる。  そして、すぐにひどく後悔した。  頬を引っぱたかれたような、今にも泣いてしまいそうな芲埜祈の表情に、息ができなくなった。  私が聞くべきではなかったのだ。やっぱり、芲埜祈が話してくれるのを待つことが正解だった。  なのに、なのに私は────。
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