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でも、もう限界だった。
芲埜祈の思い出を見てしまって、その心の中が私へ流れこんできて、芲埜祈のつらそうな顔を見ることが耐えられなかった。
「────どうして、」
三門さんが不思議そうに私の名前を呼ぶ。
「どうして魑魅の正体は兄弟なんだって、教えてくれなかったんですか」
ことん、と芲埜祈の手から箸が滑り落ちた。それは畳の上をころがり、自然と止まる。
そして、すぐにひどく後悔した。
頬を引っぱたかれたような、今にも泣いてしまいそうな芲埜祈の表情に、息ができなくなった。
私が聞くべきではなかったのだ。やっぱり、芲埜祈が話してくれるのを待つことが正解だった。
なのに、なのに私は────。
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