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「麻ちゃん」
今度は凛とした声で名前を呼ばれた。真剣な目が向けられる。
「ちょっとおいで。芲埜祈はここにいて」
その瞬間、カッと目頭が熱くなった。
恥ずかしいような申し訳ないような気持ちが沸き上がり、喉の奥が締まる。瞬きをしたら泣いてしまいそうで、唇を強く一文字に結ぶ。
「────三門さま、待ってください」
半分腰を浮かした三門さんを呼び止めたのは芲埜祈だった。顔を俯かせたまま静かに尋ねてくる。
「三門さまも麻どのも、もうご存知なのでしょう?」
え、と三門さんの顔を見れば、困ったように眉を下げる。
「三門さまは、おそらく初めの方から気付いておられましたよね」
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