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「麻どのは、空はお好きですか」
「空、ですか?」
ええ、と頷いた芲埜祈に、もう一度空を見上げる。
たしかにいい天気だと嬉しいし、夕日で染まった空は奇麗だと感じるけれど、好きかと聞かれると答えに困ってしまう。
「私はとても好きです。青い空も、赤い空も、夜空も。見上げれば、抱えていたものがすうっと消えていく。喉の奥に引っかかっていたものも目尻の熱も、全部消えていく」
そう言って上を向いた芲埜祈の目元が、少しきらきらと光っているのに気が付いた。
ああ、そうか。そういうことだったんだ。
芲埜祈が良く空を見上げるのは泣かないためだったんだ。兄弟が心配しないようにと、涙を堪えるために空を見上げるのだ。
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