1410人が本棚に入れています
本棚に追加
太陽は真上に昇り、社頭は多くの人で賑わっている。あと一時間くらいすれば茅の輪くぐりが始まる。その様子をぼんやりと眺める芲埜祈のそばで裁縫をしていた私は、何かがこんこんと叩かれる音に顔をあげる。
芲埜祈も気が付いたらしく、不思議そうな顔をして辺りを見回した。こんこん、ともう一度叩かれて、近くに合った窓ガラスを開ける。外を窺うと、壁の陰に隠れる妖の子供たちの姿があった。
「みんなどうしたの!」
「巫女さまおはよ! 太陽の光が眩しくて、社務所の入り口から入れないの」
「ここから入ってもいい?」
隣りから顔を覗かせた芲埜祈に子どもたちが嬉しそうに声をあげる。
「どれ、私が代わりましょう」
芲埜祈はそう言って手を差しだす子供たちを一人ずつ抱えて中へ入れた。
「ケヤキのお兄ちゃんありがとう、お昼って眩しいんだね!」
「あのね、茅の輪くぐりを見に来たの。」
子どもたちの目線に合わせてしゃがんだ芲埜祈に飛びつきながら、子どもたちが元気に言った。
最初のコメントを投稿しよう!