肆章 木霊の探し物

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 それからしばらくは社の裏側、裏の鳥居に近い鎮守の森で遊んでいた。  鬼ごっこ、かごめかごめ、花いちもんめ、鬼ごっこ、と無尽蔵の体力で走り回る子どもたちに、何とか休憩を聞き入れてもらって倒木に腰掛け休んでいると、ひとりの子供が甘えるようにすり寄ってきた。  「巫女さま、なんだか気持ち悪いよ」  妖狐のその子は耳をぺたんとさせて涙目で見上げてくる。慌てて額に手をやると、ほんのりと熱を帯びていた。誘発されたように他の子供たちも同じようなことを訴え始める。  「眠気が来たのかもしれませんな。帰りましょうか」  微笑みながらそう言ったケヤキ。  ひとつ頷くと、ぐずり始める子どもたちを芲埜祈と分担して宥めながら、社に向かって歩き始めた。
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