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数十分は歩いただろうか、社からはそれほど遠くはない所で遊んでいたはずなのに、まだ社は見えてこない。
私の手を握る子どもたちの手の力がだんだん弱くなってきて、目も虚ろになり始めた。それに、何故だか自分までもが気持ち悪さを感じ始めていた。
「まずい。麻どの、走りますぞ!」
芲埜祈は子供をふたり抱きかかえる。慌てて私も残りのひとりを抱えて、走り出す芲埜祈を追いかけた。
「鎮守の森と裏山の境が分かりにくいので、気が付かなかったんだ。私たちは裏山に来ていたんです。」
「裏山って、今朝三門さんが言ってたっ」
「ええ、その通りです。子どもたちは魑魅の瘴気を吸ったんでしょう。子どもは少量の瘴気にも敏感です。気が付くのが遅かったか。」
悔しそうに顔を顰めた芲埜祈は子供たちの顔を自分の方へ押し付けて瘴気を遠ざけようとした。
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