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やがて胸のあたりから、握りこぶしほどの光の玉がふわりと浮かび上がった。蜂蜜色に輝くそれは、優しい光と太陽の温かさを発しながら迷うことなく上へと昇っていく。
芲埜祈は兄弟の頬をそっと撫でて微笑んだ。
「日の光を沢山浴びた木霊の魂は、蜜のように輝くのです。……兄弟は、木霊として終えることができたんですね。」
芲埜祈はゆっくりと空へ登っていく光を見上げた。そして、
────ああああああッ!
叫ぶような声だった。これまで一度もその涙を見せようとしなかった芲埜祈が、大声をあげて泣き崩れた。兄弟の骸を抱きかかえて、なりふり構わず慟哭する。
どんな言葉よりも胸に突き刺さった。心臓が鷲掴みにされたように痛くなって、声が出ないのに涙が溢れて仕方がなかった。
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