肆章 木霊の探し物

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 毎年大晦日にある特大歌番組も後半に差し掛かった。ババが淹れてくれた温かいお茶で一息ついていると、三門さんがおもむろに立ちあがった。  「そろそろ社頭に出てくるよ。麻ちゃんも一緒にどう? みんなでカウントダウンをするんだよ」  「ああ、いいじゃないか。行っておいで、麻。神主と巫女が揃っていたら、みんなも喜ぶだろうよ」  そう言って湯飲みをお盆に乗せながら立ち上がったババは台所へと消えていく。少し考えてから「行きます」と伝え、急いで部屋に防寒具を取りに行く。窓から見えた月が今日は一段と明るかった。  「麻ちゃん、玄関で待ってるからね!」  廊下の奥から三門さんが大きな声でそう言った。はあい、と返事をして急いで支度を整える。急ぎ足で廊下を歩いていると、途中で襖から顔を出したババに呼び止められた。中へ招かれる。つくりは私の部屋と同じだったので、客間なのだろう。
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