弐章 天狗の初恋

4/100
1394人が本棚に入れています
本棚に追加
/464ページ
 節分が日曜日なのは、いけないことなのだろうか。そもそも、まだ二ヶ月も先のことを気に病む必要があるのだろうか。  「節分祭って言って、福豆とお餅を参拝者さんに撒くイベントがあるんだけど、休日だと平日の三倍は人がやってくるんだ。うちの神社、縁結びで結構有名だしね」  なるほど、と頷く。  たしかに休日なら、普段参拝に来れない人でも都合が付けやすい。  「日中は福豆を袋へ詰める作業を手伝ってもらっていいかな」  もちろんです、の意味を込めてひとつ頷く。  「ありがとう、麻ちゃん。それにしても、あの数じゃ福豆たりないよね、どうしようかなあ……」  眉根を下げて悩む三門さんは、最後の一つになった卵焼きのお皿を私の前に滑らす。  そんなさりげない心遣いに、胸がほんのり温かくなった。
/464ページ

最初のコメントを投稿しよう!