肆章 木霊の探し物

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肆章 木霊の探し物

 研ぎ澄まされたような冷たい今朝の空気に、柏手の乾いた音が良く響く。本殿の前に座って「大祓詞」を唱えていた三門さんがくるりと振り返った。  「じゃあ今日も一日、宜しくお願いします」  そう言って深く頭を下げた三門さんに、私も姿勢を正して頭を下げた。  これは朝拝と呼ばれる朝のお参りで、お祓いを受けて心身を清めることから神社の朝は始まる。  三門さんは毎朝行っているらしいが、私は今日が初参加の日だ。  隙間風が容赦なく入ってくる本殿はつま先がキンキンに冷えてしまうけれど、澄んだ空気の中で三門さんの凛とした祝詞奏上を聞いたおかげか、今日は一段と清々しい気分だった。
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