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「龍翁ドレイク……なにやら人間に対するこだわりがあるようだが、余の役にたちさえすれば関係ない」
次いでベノンは亡者を統べる吸血姫(バンパイクイーン)のカミーユと、カミーユに従属するガウロ率いる獣人を降し、これを従えた。
「龍人てのは、何を考えてるのか良く解らないから好かないわ」
「オヌシも、腹の内では何を企んでいるか知れたもんじゃないがの」
「あ~ら、イイ女ってのは、色々と秘め事があるものなのよ」
計算高いアーコイは、ベノン率いるディヴァル族が龍人や亡者を傘下に加えたのを見て、蟲人(インセクトロン)の族長ヘラクレストと共に率先してその軍門に降った。こうしてベノンの勢力はみるみる膨れ上がっていった。
「フッ、貴様らはここに来るまでに多くの非力な者共を屠ってきたはず。余も除いて、この帝国に君臨してみるか?」
従わない者たちを次々に制圧して勢力を拡大していったベノンたちであるが、その数はまだまだクロムに住む人間の半分にも満たない数だった。
「あぁ、俺に従う人間たちが妖魔の操るゴーレムを凌駕する術を身につけたら、遠慮なくそうさせてもらうよ」
冗談めかした物言いであるが、スカルの発言には本音が多分に含まれている。そして、この場にいる全員がそのことを感じ取っているが、咎めようとする者はいない。それが妖魔の帝国アディードの空気である。
スカルの言うように、人間ではごく少数の者しか操れないゴーレムを、妖魔はほぼ全ての者が操ることが出来る。それ故、人間たちは数では劣る妖魔たちの侵攻に抗うことが出来なかった。
「はっ、例えゴーレムが使えたとしても所詮は人間。あのケドニアって奴みたいに腰抜けばかりじゃねぇか」
ガウロは、民を見捨てて真っ先に逃げてしまったクロムの領主、ケドニアを思い浮かべてスカルを嘲笑する。
クロムを治めていたケドニア候は、民のことなど全く考えず、自らの保身にしか考えがまわらない無能といっても差し支えのないような人物であった。
彼はクロムの機鋼部隊が緒戦で敗れるやいなや、全てを投げ出し側近の者だけを連れてドリュオン本国へ落ち延びてしまった。ケドニア候が逃げ出した事実はすぐにクロム全土に知れ渡り、総指揮官を失った混乱と士気の低下から、クロムの正規軍はあっさりとアディードに敗れ去ったのだった。
「あのケドニアという男の逃げっぷりは見事でしたね。おかげで我らは、近隣の諸国まで容易に手に入れることが出来ましたよ」
這う這うの体でゲートに逃げ込んだマケドニアとその側近たちの有り様を思い浮かべて、アヴィルもまた愉悦の笑みをもらすのであった。
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