スカル・ボーンと闇の支配者たち

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スカル・ボーンと闇の支配者たち

 クロム星系第3惑星クロム。かつてここはドリュオンでも有数の工業の発展した豊かな星であった。しかし、妖魔たちの棲むアディーム星域とゲートが繋がったことによって状況は一変した。妖魔の最上位種であるディヴァルの長べノンは、ドリュオンの文化に触れて国家という概念を知るや否や、たちまちアディームに棲む様々な種族をまとめ上げると、自らを魔王と称してアディード帝国を建国、ゲートで隣接するクロム星域へと攻め込んできた。  ドリュオン本国より領主としてクロムに派遣されていたケドニア鋼爵は、クロムの駐留軍が緒戦で劣勢になると領土も民も放り出してドリュオン本国に逃げ帰ってしまった。ただでさえ劣勢であったドリュオン軍は指揮系統トップの消失により、瞬く間に瓦解した。  魔王べノンはケドニア鋼爵の居城であったディアル城に居を構え、首都であったクロージの街からまともな人間を駆逐し、妖魔の跋扈する常闇の都ネクロージへと作り替えた。  ディアル城の一室、一人の男が先日のゲートでの攻防戦の戦闘記録に目を通している。その男は黒髪に碧い瞳、彫りの深い精悍な顔立ちの人間の若者だった。彼の名はスカル・ボーン、人間の身ながらアディードを支配する7人の氏族長の1人にまで上り詰め、妖魔たちから仮面の鬼公子と呼ばれて恐れられている。 「ほぅ、プリンス・アーサーが自ら出張ってくるとはな……親父殿め、随分とご大層な駒を調達して戻って来たな。まぁ良い、せいぜい俺の野望の役に立ってもらおう。フフフフ…………」  スカルが見る水晶球には、単身で妖魔の群れ深く切り込んで戦うドラゴンが映し出されている。この映像、先の戦いで命からがら逃げ伸びて来たゴーレムやパペットに記録されていたものである。  スカルは全ての映像に目を通し、分析した軍師による所見まで読むと、傍らに置いてあったドクロを象ったマスクをかぶって立ち上がると、ドアを開けて部屋の外へと出る。  部屋を出たスカルが靴音を響かせてディアル城の回廊を進んで行くと、正面から1匹のオーガがやって来た。オーガはスカルの姿に気づくと、道を塞いで立ちはだかる。 「ん~、なんじゃぁ、薄汚い人間風情がこんなところでなにしてる? 人間なら人間らしく、城の外で地面に這いつくばっておれ」 オーガは尊大な態度で言うと、スカルを押し退けようと肩に手をかける。
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