年が明けて

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「こんにちは」  リビングの炬燵(こたつ)でそれぞれ手にした本に見入っていた甥姪二人はパッと目を上げてページを閉じる。  美咲ちゃんは台湾人作家・黄春明の小説「さよなら・再見」、春樹くんは「ちびまる子ちゃん」の一巻。いずれも私が昔、買って実家の本棚に置いて行ったものだ。 「明けましておめでとうございます」  努めて笑顔で告げると、二人も正座して頭を下げた。 「おめでとうございます」 「おめでとうございます!」  五歳の莉奈が笑いながら私の隣で声を張り上げる。 「オエエトウゴザマス!」  腕に抱いた二歳の玲奈が笑顔で真似ると、正座した二人の甥姪のどこか固い笑顔も和らいだ。  この二人も莉奈と玲奈くらいの時は満面の笑顔で手放しで甘えてきたのに。  私としてはこの子たちにきつい言葉を掛けたりそっけない態度を取ったりした覚えはない。  だが、中学一年生と小学五年生の甥姪たちにとって盆暮れに顔を合わせる叔母はもう手放しで甘えられる存在ではないのだろう。自分たちより幼い従妹二人も出来たわけだし。
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