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小旅行から帰り、武将達が成仏して数日が経った。
なんだかあの騒がしさが懐かしく感じてしまい、例のアプリを久しぶりに開く。
ストーリーを勧めて行くと才蔵が出てきた。
なんだかストーリーが皆を見ているみたいで自然と笑みが溢れる。
そしてストーリーを進めていき、私が誰を攻略対象に選択していたのかがわかった。
適当に選んだから覚えていなかったが、そこにはハッキリ書かれている。
「霧隠 才蔵……」
その名を口にした瞬間涙が溢れだす。
私は姫じゃないし、才蔵のことを恋愛としても見ていなかった。
なのにどうしてこんなに切ないのか。
姫の記憶や想いを見たからなのか、それとも私は前世と同じ人に惹かれていたのか。
自分の気持ちはわからない。
ただハッキリしていることはある。
もう現代に彼らはいないということ。
いたときは五月蝿くて早く成仏してほしいと思っていたのに、いつからこんなに彼らといることが当たり前になっていたのだろう。
そんな日々を過ごし、今日は冬休み明けの登校日。
相変わらずお母さんに起こされ遅刻ギリギリで教室に到着。
「冬休み明け早々に遅刻ギリギリじゃん」
「いや、だってさ。寒くてなかなか布団から出られなかったんだもん」
私の普通の日常。
これが、ミニ武将達が現れる前の私の毎日。
それがまた始まる。
そんな私の隣の席に誰かが座る。
確か隣はずっと不登校で学校に来ていなかった筈。
なんでも他の学校では喧嘩などをしていたなどの噂を聞いていた。
とりあえず関わらないように視線を前に固定していると、相手から声をかけられ恐る恐る振り返る。
「なあ、アンタ、どっかで俺と会ったか?」
「さい、ぞう……」
そこにいたのは、才蔵とそっくり男子。
でも、才蔵は成仏したしこんな人のサイズな筈がない。
きっとそっくりさんなんだろうけど、うりふたつだ。
「おーい」
「あ、えっと。初めてだと思うよ」
「だよな。でもなんかさ、懐かしいっつーかよくわかんねー感情になるんだよな、アンタ見てると」
時を越えて私の前に現れたミニ武将達。
もしかしたら、目の前にいるのは才蔵の――。
時を超えた想いの繫がり。
それは現代に届き繋がっていく。
─end─
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