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第0武将「始まりは一通のメール」
想いは時を越えると言うが、本当にそんなことがあるとは思っていない。
漫画やアニメの世界でもない、現代を生きる人にとって、昔の想いが今の時代まで届くはずがないと思っているから。
「奈流もこのアプリやってみなよ」
下校時間。
帰り道で友達が見せてきたスマホには、武将との恋愛アプリが表示されている。
歴史や武将に興味のない私にとってはどうでもいいことで、はいはいと適当に受け流す。
最近では、武将系のアプリや携帯ゲーム機のソフトを見掛けたり、歴女なんて言葉も聞く。
私からしてみれば、昔の人物の何がいいのかわからない。
そもそも、実際の恋愛でもないのに何故そこまで楽しめるのか不思議だ。
「そんなに面白いのかな」
単なる気まぐれだった。
家に帰り自室でスマホの電源を入れると、先程友達が見せてきたアプリをインストールする。
先ず最初に自分の名前を設定する画面になるが、名前を考えるのも面倒なため自分のフルネームを打ち込む。
次に表示されたのは、どの武将と恋をするか。
これも面倒で適当に選び、物語はスタート。
読み進めていくが、定番のトリップする主人公の物語。
ありきたりな内容だが、序盤のストーリーはなかなかに長め。
そろそろアンインストールしようかなと思っていたその時、丁度今日の物語は終了した。
「1日に決まった話数しか見れないわけね」
ここで物語の続きが気になる人は課金してしまうのだろうが、私は課金ではなくアンインストールしようとする。
だが、画面を見るとメールマークのところに1と表示されている。
始めたばかりのためお知らせか何かだろうと思いながらも気になりタップすると、件名に奈流へと書かれており、内容は『時を越え会いに行く』ただその一言。
このアプリのシステムなのかなと思いながらアプリを閉じ、また何時もの日々の始まり。
そう思っていたのだが、翌朝目を覚ました私の視線の先には、何故かミニ武将の姿があった。
人の布団の上に横一列に座る3人のミニ武将。
どうやら私はまだ眠っているようだと苦笑いを浮かべる。
「昨日の文は読んだか」
一人のミニ武将が喋りかけてきたため一瞬驚いてしまったが、文という言葉に心当たりがある。
もしかして、昨日のアプリに送られてきたメールのことなのではないかと尋ねてみると、武将は頷く。
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