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一方、ここは極寒地獄と呼称される【北空域ノースアグニーの最端第2ゲート】
結城勇真は周りを見渡したが、どこもかしこも薄暗かった。
頼りなくゆらゆら揺れる十数本の細長い蝋燭が、漸く一人の少女の顔を灯す。
その顔付きは真剣で、先程から淡い光を放つ丸い水晶に掌を置き、何かを呟いている。
そんな少女を尻目に俺はというと、身体の感覚がほぼ失われ瞼が重くのしかかってくるのを必死で堪えていた。
朦朧としていく意識の中、両親と妹の笑顔が走馬灯の様に次々と浮かんでは消えていく。
「ユーマ君、ダメですよ寝ちゃ。本当に死んじゃいますよ~。
僕の詠唱が終わるまで堪えて下さい!」
「…………あぅ、が…ん………ば………るから………は……や…くぅ………」
両腕で自分の身を護るように抱え、ぶるぶる震える切実な想いにシャルルは小さく頷くと、最後の詠唱を終える。
すると水晶は激しい光を放ち、そのまま二人を包み込んでいく。
ピカー
俺は光の眩しさに目を閉じていた。
いつの間にか肌に突き刺さる不快な寒さは失われ、代わりに優しく穏やかな風が肌を撫でる。
ゆっくり目を開いてみると、つり目の少女が心配そうにこちらを見つめていた。
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