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――そこは自分の存在した世界と大きくかけ離れた所だった。
眼前にあるのは空に浮かぶ島。
それも一つや二つではなく、見渡す限りに浮かぶ島々。
それはまるでファンタジーゲームの一場面のよう。
だが、膝の感覚、肺を満たす冷たい空気、これらがリアルであると訴えてくる。
それでも現実主義の俺は、
「あー、これあれだ。 夢だ…」
そう自分に言い聞かせるように頭を掻きむしる。
が、やはり感触は現実そのものだった。
やがて、自分の足場の存在が夢だという希望を拒絶することになる……
ゴツゴツした漆黒のトゲ、その連なる先に二本の角らしきモノがある。
エゾシカのようなその角は、一定のリズムで上下運動を繰り返している。
俺の身体も逆らえず、相まって揺れる。
さて、いよいよ幻想とサヨナラの瞬間だ。
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