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バサァ バサァ
先程から無意識に拒絶していた音の正体が明らかになる。
巨大な応援旗を振っているかの様なその轟音は断続的に俺の鼓膜を叩く。
「え…、ま、まさか…。 このシルエットって………ド、ドラゴン?!」
俺の声に反応するようにそれは急にスピードを上げた。
次々とやってくる無数の雲が高速で後ろに流れては小さくなっていく。
一歩間違えれば崖に激突しかねないスピードの中、ドラゴンはいとも簡単に浮遊島の間をすり抜ける。
「ちょ、まっ………は、はえぇぇぇよおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ドラゴンは自分の胴体の倍はあるであろう両翼を上下に大きく羽ばたかせると更に上空へ舞う。
そして、一段とスピードを上げながらこの辺りで一番大きな島へ近づいて行く。
「う、うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!! な、な、な、なんなんだよおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「案ずるな少年よ、我はうぬをとって食おうとしている訳ではない、暫し揺れるがしっかりと捕まっておるがいい」
「しゃ、しゃべれるのかよぉぉぉぉぉぉ!し、しかもめちゃくちゃはえーし、こえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
もうその後は、成すがままだった。
抵抗は命の終わりと悟った俺はドラゴンの背中にある強靭なトゲの一つを両腕でがっしり捕み神に祈った。
この世に神がいるのかは不明だが、兎に角祈った。
そしてその祈りが通じた様だ。
どうやら目的地に着いたらしく、次第に揺れは緩やかになっていく。
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